注文住宅は何千万円という高額な買い物なため、施工不良や不備があってはならないもの。
日本では家を新築する際、構造部分に欠陥がないか、図面通りにきちんと施工が行われているかの検査が義務付けられています。
そのため、俗に言う欠陥住宅はないのでは?と思うかもしれません。
しかし残念なことに、住宅に関する相談は2021年には3万5040件にものぼり、そのうち新築は2万3994件という多さ。
近年ではこういった欠陥住宅を防ぐため、第三者に住宅診断をしてもらうホームインスペクションが注目されています。
そこで今回は、注文住宅においてホームインスペクションを利用する意味や、メリット・デメリットについてご紹介します!

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ホームインスペクションとは


ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅の専門家が第三者の立場から、住宅の欠陥や現場での施工不良などを判断し、是正のための的確なアドバイスを行うこと。
不動産会社や建築会社とは関連のない、第三者の立場だからこそ、厳しい目で診断を行ってもらえます。
日本ではあまり馴染みがありませんが、実は海外では一般的。
海外では家を新築するよりも、中古物件を購入または賃貸し住むことが多いため、劣化の度合いなどを調べるためにもホームインスペクションを利用するのが当たり前なんです。
ホームインスペクションを行うには、住宅に関する専門的な知識が必須です。
そのためホームインスペクター(住宅診断士)・建築士・既存住宅状況調査技術者などの資格を有する専門家が多く、安心して任せられるのも魅力のひとつ。
診断は中古住宅・新築建売住宅・新築注文住宅など家の状況によって、どのタイミングで診断を行うか、診断する場所が異なります。
中古住宅(戸建て・マンション)
中古住宅の場合は、購入前にホームインスペクションを利用するのが一般的。
建物の劣化の状況や、今後の修繕の予測、だいたいの費用などをアドバイスしてもらえるため、住み始めてからのランニングコストも考慮して検討することができます。
中古物件の場合、ぱっと見はきれいであっても、重大な欠陥が隠れている可能性も・・・
- 基礎・外壁・屋根・排水管・床下などの劣化
- 床下や天井裏の浸水
- 床の傾き
- コーキングの劣化・漏水のリスク
- 排気ダクト
これは一例ですが、建物の劣化などを診断し、安心して暮らせるかどうかを確認してもらいます。
新築の建売住宅
新築の建売住宅の場合も、中古住宅と同じく購入前がベスト。
購入前に診断を行い、何かしらの問題が見つかった場合、きちんと改修してから引き渡ししてもらうことができます。
もちろん購入前なので、結果次第で購入を見送るのもOK。
- 基礎・外壁・屋根などの亀裂
- 面通りに正しく施工されているか
- コーキングはしっかり施工されているか
- 浸水・漏水・漏電のリスク
- 設備等の動作
新築だから安心というわけではないので、しっかりと診断してもらいましょう。
新築の注文住宅
新築の注文住宅の場合は、建築工事請負契約後から引き渡しまでの間に利用するのがベスト。
完成後の引き渡し前のタイミングでもいいですし、検査機構の検査が入るタイミングに合わせてでもいいでしょう。
新築の場合は施工の実際の現場を見て、その場で診断してもらえるのが最大のメリット。
家が完成してからでは、壁の中は見られませんからね。
- 基礎工事
- 断熱材の施工時
- 電気工事
- 外装工事
- 内装工事
など、その都度チェックしてもらうと安心感が増します。


ホームインスペクションはどこに依頼する?


ホームインスペクションを依頼したいと思っても、どこに依頼すべきか迷ってしまう人もいるでしょう。
ホームインスペクションを利用するには、主に独立系の専門会社・個人での活動・建築会社系列の専門会社があります。
それぞれに特徴があるので、自分たちに合ったところを選びましょう。
独立系の専門会社
ホームインスペクションを行っているところとしては、独立系の専門会社が最も多いです。
独立系の会社を選ぶ最大のメリットは、不動産会社や建築会社との癒着がなく、第三者の立場から診断を行ってくれること。
気を使う必要がないため、軽微な問題であってもしっかりと指摘をしてくれます。
費用は会社によって様々ですが、マンションなら5万円ほど、戸建てなら10万円ほどが相場です。
建物の大きさや、診断する範囲によっても変わります。
個人の活動
会社に所属せず、個人でホームインスペクションの活動を行っている場合もあります。
近年では暮らしのマーケットやココナラなど、専門家が知識を活かして活動できる場が増えていますよね。
個人に依頼する場合は、費用や日程などを気軽に相談でき、他の人からの評価も見られるのがメリット。
ただし個人の能力が重要になるため、経歴や資格などをしっかりとチェックしましょう。
建築会社系列の専門会社
大手の不動産会社や建築会社のなかには、系列のグループ会社でホームインスペクションを行っているところも。
自分で依頼先を探す手間が省け、費用も明確なのがメリットです。
ただし本来ホームインスペクションとは、第三者が公平な立場で診断を行うべきもの。
系列だからこそお互いを高め合うために厳しい目で診断するところもあれば、公平さに欠ける可能性もあるので、見極めが大事です。
注文住宅でホームインスペクションを利用するメリット


ホームインスペクションは日本ではまだ認知度は低いですが、海外では当たり前に利用されています。
利用することで様々なメリットがあり、日本でもこれから需要が高まるかもしれませんね。
長く住む家だからこそ、欠陥や施工不良を防ぎたいというのであれば、ホームインスペクションはおすすめです。
素人では分からない施工不良を防げる
ホームインスペクションを行うのは、建築に関する専門知識を持ったプロです。
情報取集がしやすい世の中とはいえ、専門知識のない人ではいくら現場を見ても、施工不良なのかこれが普通なのかの判断ができません。
その点ホームインスペクションなら、素人では分からない細かい部分までプロ目線でチェックしてもらえるのが魅力。
施工不良とは、本来あるべきものがない、などの重大な欠陥だけではありません。
亀裂や浸水がないか、ビスの緩みがないか、漏水のリスクはないか、断熱材は隙間なく充填されているか、動作不良はないかなど細かく診断してくれるので、住み始めてからのトラブルも事前に防ぐことができます。
第三者の目で的確に判断してもらえる
家が完成し引き渡す前に、社員が一通りチェックする”社内検査”が行われるのが一般的。
そこでも図面通りに施工されているか、仕様の相違がないか、動作不良の有無、亀裂や浸水の有無、クロスのひび割れや浮きの有無などを確認します。
しかし社内検査をどの程度行うかは建築会社によって異なり、簡易なチェックのみで済ませてしまうことも。
ホームインスペクションなら、依頼を受けて診断をする以上、第三者の厳しい目で的確な判断を行ってもらえるので、安心して任せられます。
現場に緊張感を与えられる
新築の注文住宅の場合、ホームインスペクションを利用することを伝えておくだけでも、現場に緊張感を与える効果があります。
現場の職人さんたちにとっては、是正の診断を受けて補修が発生すると、二度手間になってしまいます。
仕事を発注する建築会社からの評価も下がるかもしれません。
もちろん普段は気楽にやっているというわけではありませんが、より一層気を引き締めて作業にあたってくれるようになるでしょう。


注文住宅でホームインスペクションを利用するデメリット


ホームインスペクションには様々なメリットがありますが、反対に気を付けなければならない点もあります。
デメリットも理解したうえで、利用するかどうかを決めましょう。
建築会社には歓迎されない
ホームインスペクションは、粗を探すようなものと感じる人もいます。
プロ意識をもって仕事をしている職人さんのなかには、ホームインスペクションという行為自体を嫌がる人も。
また、最近では家づくりの過程などをSNSに投稿する”家アカ”も多いですよね。
ホームインスペクションを利用し、是正箇所が見つかった場合、それをSNSにあげられるのは建築会社にとっては嬉しいものではありません。
断られることは少ないですが、歓迎されるものではない、ということを覚えておきましょう。
費用がかかる
ホームインスペクションを利用するには費用がかかり、診断する項目や現場に行く回数などによって金額が変わります。
既に完成している建物であれば、目視で確認できる範囲で行いますが、注文住宅の場合は工事中だからこそ確認できることも。
戸建ての場合は10万ほどが相場ですが、オプションを付けると高額になる場合も。
必ず利用する前に費用を確認し、費用対効果も加味しながら検討するようにしましょう。
ホームインスペクションは本当に必要?


ホームインスペクションは必要ないという人もいますが、実際はどうなのでしょうか。
実はホームインスペクションを行った現場では、ほとんどの物件で何かしらの問題が見つかると言われています・・・
現場施工である以上、技術力や監督スキルによって仕上がりには差が出てしまうもの。
そういった技術のムラや不備を指摘し、欠陥を防ぐのがホームインスペクションの役割です。
ちなみに新築の場合、建築確認のための検査や、瑕疵保険に加入するための検査を必ず行わなければなりません。
しかしこの検査は簡易的なもので、ホームインスペクションとは全く異なります。
ホームインスペクションを必要と思うかどうかはそれぞれですが、”安心を買える”という点ではぜひ利用してほしいサービスです。
ホームインスペクションで安心を買おう


2018年4月より中古物件の売買において、不動産会社が売主・買主それぞれにホームインスペクションについての説明を行うことが義務化されています。
しかし新築においては説明義務はなく、実際に利用する人もあまり多くはありません。
”欠陥住宅”というと他人事のように思えますが、自分でも出来る対策をしておくと、家づくりの後悔を防ぐことができます。
自分で一から建築の勉強をするのは難しいので、そういうときはプロの力を借りましょう。
不安を解消したい、安心を買いたいという人には、ホームインスペクションはおすすめです!

