全館空調は、注文住宅で取り入れたい設備のなかでも、人気の高い設備のひとつ。
一年を通して快適に過ごせる、全館空調のある暮らしには憧れますよね。
しかし一方で、「後悔している」というマイナスの口コミが気になるという人は多いでしょう。
我が家では新築時に全館空調を採用し、住み始めてから10年が経ちました。
全館空調が快適な暮らしを叶えてくれることは、間違いありません。
しかし、10年住んで分かった後悔ポイントもあります。
そこで今回は、実際に私が感じた「全館空調にして後悔したこと」をご紹介。
全館空調を検討しているという人の、参考になれば嬉しいです♪
大手ハウスメーカーに4年 / 年間1,000棟を手掛けるビルダーに8年 / インテリアコーディネーター
注文住宅業界に12年間勤めていた知識と経験を活かし、家づくりのノウハウを発信しています✨
家づくりのお金、間取り、インテリアなど
「かゆいところに手が届く…!」そんなお役立ち情報をお届けします!
全館空調の仕組みと特徴
全館空調とは、家中の温度管理を一括で行ってくれる空調システムのこと。
元々は商業施設や老人ホームなどで使用されており、住宅に普及し始めたのは15年ほど前から。
特に高級住宅路線の大手ハウスメーカーが取り扱うようになってからは認知度が上がり、今では”新築で取り入れたい設備”として人気があります。
冷暖房のシステムはメーカーにより異なり、吹き出し型、床下冷暖房型、壁掛けエアコン型など様々。
ハウスメーカーではそれぞれ採用できる全館空調メーカーが決まっていますが、壁や天井に吹き出し口を取り付ける、吹き出し型が主流です。
全館空調の仕組みは、まず外部から新鮮な空気を取り込むところから始まります。
外部から取り込んだ空気は、フィルターを通り埃や花粉などを除去してから空調室内機へ。
空調室内機からダクトを通り各部屋の吹き出し口まで運ばれ、設定された温度に空調された空気を放出します。
加えてリターンガラリと言われる、空調された空気の戻り口を作ることで、常にきれいな空気が循環するという仕組みです。
古い空気は排気ユニットから、建物の外へ出ていきます。
操作は簡単なパネル式なので、お子さんやご年配の方でも心配ありません。
全館空調のメリット
全館空調は、快適な暮らしを叶えるためのメリットが盛りだくさん。
- 家全体が一年を通して適温
- きれいな空気が循環する
- 空気の流れがゆるやか
- デザイン性の向上
- 日々のメンテナンスが楽
全館空調の最大のメリットは、室温にムラがなく、家中どこにいても快適なこと。
特に冬は家の中でも寒暖差があり、トイレや脱衣所などエアコンが効かない場所は寒いですよね。
全館空調なら室温に差がないため、お風呂上りに寒い思いをすることもありません。
また、常にきれいな空気を循環してくれるので、花粉症やアレルギーがある人にもおすすめ。
エアコンのように強い風ではなく、ゆるやかに空気を循環させてくれるので、埃が舞う心配もありません。
お手入れは月に一回フィルターの掃除をするだけでOKなので、エアコン一台分と同じ手間だけです。
全館空調のデメリット
全館空調には、様々なデメリットもあります。
- 初期費用がかかる
- 電気代が高い
- 空気が乾燥しやすい
- 季節によっては温度調整が難しい
- 故障したら家全体の冷暖房が止まる
デメリットとして挙げられるもののうち、最も気になるのが初期費用と電気代でしょう。
全館空調は設置するのに100万円以上の費用がかかるため、費用対効果がどうなのか気になりますよね。
月々の電気代も、エアコンに比べるとどうしても高くなりがちなので、家計に影響しないかどうか確認しておく必要があります。
また、全館空調は一日中エアコンを付けているようなものなので、冬は空気が乾燥しがち。
加湿器をフル稼働させていても乾燥が気になる、という声も多いです…
朝夕と昼間の寒暖差が大きい季節や、空調管理の必要のない季節は、温度の調整が難しいというデメリットもあります。
我が家の全館空調
我が家の全館空調は、アズビル社の吹き出し型。
住友不動産、住友林業、積水ハウス、大和ハウスなど大手ハウスメーカーでも採用されています。
全館空調は基本的には付けっぱなしが正解ですが、我が家ではエアコンなしで過ごせる季節は切ってしまっています。
その理由は、電気代と温度管理の難しさ。
電気代は、シンプルに高いから。
温度管理については、我が家ではわんちゃんを飼っていて、快適に過ごせる温度が人と違うためです。
電気代に関しては別記事でリアルな金額を紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください!
10年住んで感じた全館空調の後悔ポイント
ここからは、実体験をもとに「全館空調の後悔ポイント」をご紹介。
全館空調のある家に住んで10年、全館空調って最高!と思うときもあれば、やめとけば良かった…と思うときもあります。
新築時の10年前と今では、省エネ性や機能性に差がある部分もあると思うので、参考程度に見てくださいね。
ちなみに、全館空調といっても家の広さ、間取り、気密・断熱性・生活スタイルによって快適さは変わります。
我が家は暖房効率が悪い間取りなので、これから紹介するような点が気になりました・・・
電気代が高い
我が家では全館空調は電気代が高くなると分かっていて、採用しました。
実家が古い木造で、冬は部屋の中が寒くてたまらなかったので、とにかく冬を快適に過ごしたいという思いでした。
ただ、想像以上に高かった。
はじめのうちは仕方ないと言い聞かせましたが、月に電気代だけで5万6万も払っていると、次第にそのお金をもっと別のところに使いたいと思うように。
快適な暮らしにお金をかけたつもりでしたが、お金をかけたいところの優先順位が変わってしまったのが後悔ポイントになりました。
部屋によって暖まり方が違う
我が家が新築した10年前は、部屋ごとに温度を設定できる機能がありませんでした。
そのため、家中どの部屋も同じ設定温度。
それはいいとしても、広い部屋と狭い部屋では、暖まり方に差がありすぎるのが難点。
一番広いLDKに合わせると他の部屋の空調が効きすぎてしまい、他の部屋に合わせるとLDKが過ごしにくいという事態に。
我が家はLDKの広さにこだわり、さらに吹抜も二ヵ所あるので、もっと空調管理のしやすい間取りにすべきだったなと後悔しています。
今はオプションなどで部屋ごとに設定できる機能があるので、今建てるなら迷わず課金します。
人によって快適な温度が違う
旦那は暑がり、妻は寒がりな我が家。
季節の変わり目には、暖房か冷房か送風か、設定温度は何℃にするかでよく揉めました。
人なら洋服などで調整すればいいですが、さらに我が家にはわんちゃんがいます。
わんちゃんが快適に過ごせる温度に合わせると、特に夏の冷房は私には寒すぎるんです。
家族ぞれぞれ好みの適温が違う場合、部屋ごとに設定温度を変えられる機能を付けるのがベストです。
結局我が家では、一部屋わんちゃんのために空けて、お部屋にルームエアコンを後付けしました。
足元が冷えやすい
全館空調は室内の温度を一括管理しているとはいえ、暖かい空気は上にあがっていくため、どうしても足元が冷えがちに。
これも、我が家の場合は吹抜のせいですね。
LDK以外は暖かい空気が蓄熱しているのか、足元も暖かいので、間取りの影響が大きいと思います。
全館空調があるから吹抜も大開口のサッシも大丈夫!なんて考えていましたが、これから家づくりをする人は、暖房効率も考えた間取りにするといいですよ。
使っていない期間が多い
電気代が高いこと、温度管理が難しいことが影響して、我が家では全館空調を切っている期間が長いです。
真夏や真冬は付けっぱなしにしていますが、過ごしやすい気候の春や秋は、空調なしにしています。
”一年中快適に暮らせるから”という理由で採用しましたが、実際に恩恵を受けているのは一年のうちの半分ほど。
さらに我が家は夫婦共働きなので、稼働している季節でも留守にしている時間が長いです。
在宅ワークだったり、小さいお子さんがいて家で過ごす時間が長いなら、全館空調はおすすめ。
しかし生活スタイルによっては、過剰な投資かなとも思います。
全館空調のデメリットのうち気にならないこと
全館空調のデメリットとして挙げられることのなかには、個人的にはあまり気にならないことも。
ここでは、そんな「我が家ではデメリットにならなかったこと」をご紹介します。
乾燥は気にならない
全館空調は空気が乾燥するため、冬は加湿器が欠かせないという口コミをよく見かけます。
しかし我が家では、冬でも空気の乾燥が気になったことはありません。
リビングには加湿器が置いてありますが、快適な湿度を保てているため稼働させていないです。
(アズビル社の全館空調は操作パネルに室内の湿度も表示されるため、数字を見て調整しています)
乾燥が気にならないのは、壁と天井に漆喰を塗っているおかげ。
漆喰には調湿効果がありますが、想像以上の効果を発揮してくれています。
費用はかかってしまいますが、乾燥が気になって全館空調を悩んでいる人には、漆喰をおすすめします!
故障したことはない
全館空調は故障すると、家全体の空調が止まってしまいます。
故障した場所によっては大掛かりな修理が必要になるため、一週間ほど空調が効かない場合も。
電化製品である以上どんな設備でも故障するリスクがありますが、我が家では故障したことは一度もありません。
フィルターの掃除も月に一回行うだけですが、特に違和感を感じたこともないです。
簡単に壊れるものではないので、その点はあまり心配しなくて大丈夫ですよ。
全館空調は慎重に検討しよう
全館空調は高額な買い物なので、住み始めてから後悔することのないよう、デメリットについてしっかり理解しておかなければなりません。
家の間取りや生活スタイルによっては、デメリットが大きく感じることも。
我が家はデメリットに感じることが多くなってしまいましたが、もちろん快適さも実感しています。
全館空調を検討している人に向けてのアドバイスとしては、
- 家の気密・断熱性を高めて省エネ運転にする
- 大開口のサッシや吹抜は暖房効率が下がるので注意
- 部屋ごとの温度設定を出来るようにする
- 在宅時間が長いならおすすめ
- 乾燥対策には漆喰がおすすめ
しっかりと対策すればデメリットを抑えることができるはず。
ぜひ参考にして、後悔のない家づくりを叶えてください!