【床暖房VS全館空調】注文住宅で採用するならどっちがいい?それぞれのメリット・デメリット

寒い冬を快適に過ごすためには、暖房設備は欠かせません。

最近では高気密・高断熱の家づくりが人気で、冬でも素足で過ごせるような生活に憧れますよね。

せっかく家を新築するなら、快適な暮らしを叶えてくれる、床暖房や全館空調を検討しているという人も多いでしょう。

しかし、いざ採用するとなると、どちらを選ぶべきか迷ってしまうという声も。

・床暖房と全館空調はどっちが快適なの?
・それぞれのコストを知りたい
・全館空調は電気代が高いって聞くけど実際どう?

など、様々な相談をもらいます。

そこで今回は、床暖房と全館空調の違いを様々な点から比較し、それぞれの特徴をご紹介。

メリット・デメリットも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

大手ハウスメーカーに4年 / 年間1,000棟を手掛けるビルダーに8年 / インテリアコーディネーター

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目次

知っておいてほしい「熱の伝わり方」

熱の伝わり方には「対流」「伝導」「ふく射」の三種類あり、それぞれに特徴があります。
  • 対流…冷たい空気の中に暖かい空気が加わると空気が移動し、循環することで暖める
  • 伝導…熱が物を伝わり、触れることで暖める
  • ふく射…赤外線の熱が壁や天井に反射することで暖める

暖房器具として最も主流のエアコンは、暖かい空気を放出し、空気を循環させてることで部屋を暖める対流式です。

全館空調やファンヒーターも同じですね。

ホットカーペットや湯たんぽは、暖かい物に直接触れるため、伝導式

床暖房は、熱源から足裏に熱が伝わる伝導とふく射によって部屋を暖めます。

薪ストーブは、薪を燃やしたときに出る熱エネルギーが赤外線として放出されるため、ふく射式

この中でも、部屋全体が均一に暖まりやすく、最も暖かさが持続するのはふく射です。

ふく射は空気自体を暖めるため、体の内側からポカポカするのが特徴で、空気が乾燥しないといったメリットもあります。

床暖房の特徴とメリット・デメリット

床暖房とは、床下に熱源を配置することで、床から部屋全体へと熱を伝える暖房システム。

床からの伝導と、ふく射熱によって部屋全体を暖めます。

床暖房というと「暖かいのは足元だけ」と思われがちですが、足元だけでなく、部屋全体も暖めてくれる暖房システムなんです。

床暖房にも種類があり、床を暖める方法とコストに違いがあります。

温水式床暖房

温水式床暖房は、床下にパイプが通った温水マットを設置し、電気や給湯器で加熱した温水を循環させることで暖めてくれます。

電気・ガスどちらでも利用でき、すぐに暖まり始めるのが特徴。

エコジョーズやエコキュートといった給湯器を使用するのであれば、それらを利用して導入できます。

床暖房のなかでも、温水式床暖房が主流です。

電気ヒーター式床暖房

電気ヒーター式床暖房は、床下に電気ヒーターを内蔵したパネルを設置し、発熱することで暖めてくれます。

温水式に比べると初期費用は抑えられますが、暖まるまでに時間を要すると言われています。

また、電気式の場合は立ち上がりに電力が必要なため、電気代が高くなる可能性も。

床暖房のメリット

床暖房には暖かく快適という以外にも、様々なメリットがあります。
  • 冷えがちな足元が暖かい
  • 空気が乾燥しない
  • ゴミや埃が舞う心配がない
  • 掃除の手間がない
  • 子どもにも安心・安全

暖かい空気は上昇するため、暖房を付けていても、冬は足元が冷えて悩んでいるという人は多いはず。

特に足元が冷えがちな女性や、靴下を履かない小さいお子さんがいる家庭では、足元が暖かい床暖房は魅力的ですよね。

足元にヒーターを置きたいけど、子どもがいたずらしたり、触ってケガをしたら困るから置けない・・・なんて悩みも解決してくれます。

他にも、空気が乾燥しづらく、風によって埃が舞うこともないので、ペットのいる家庭にもおすすめ。

熱源が床下にあるため、日々の掃除の手間がないのもメリットのひとつです。

床暖房のデメリット

たくさんの魅力がある床暖房ですが、もちろんデメリットもあります。

  • 初期費用がかかる
  • メンテナンスが必要(温水式)
  • 別で冷房器具が必要
  • 電気代がかかる

まず、床暖房は導入するのに初期費用がかかります。

また、普段の掃除は不要ですが、温水式の場合は年一回の不凍液の交換が必要。

費用は一万円ほどなので高額ではありませんが、10年~15年ほどで熱源機の交換も必要になり、これには数十万円かかります。

電気代は、床暖房の範囲や使用頻度にもよりますが、エアコンよりもやや高め。

他のデメリットとしては、床暖房には冷房機能がないため、別でエアコンも用意しなければならないことがあげられます。

床暖房の初期費用

床暖房を設置するには、一帖あたり5万~10万ほどかかります。

リビング・ダイニング・キッチンの三カ所に設置するとなると、だいたい12~14畳ほどになるため、60万~140万ほど。

床暖房には温水式と電気ヒーター式がありますが、初期費用は電気ヒーター式の方が安く、温水式に比べると1~2割ほど初期費用を抑えられます。

ただ、最近では床暖房が標準仕様になっている建築会社も多く、一条工務店はなんと全館床暖房。

床暖房が標準仕様なら追加費用がかからないため、採用しやすいですね。

床暖房のランニングコスト

床暖房は、暖房器具の中でもランニングコストが安いと言われています。

電気代はエアコンに比べるとやや高めですが、電気ヒーターやオイルヒーターほどではありません。

電源を入れてからの立ち上がり時に最も電力を消費するので、点けたり消したりを繰り返さなければ、電気代が高額になる心配はありません。

全館空調の特徴とメリット・デメリット

全館空調とは、家全体の空調を一括で管理する冷暖房システムのこと。

夏は冷気を、冬はあたたかい空気を循環させることで部屋全体をあたためる、対流式の暖房設備です。

大手ハウスメーカーでも全館空調を取り入れているところは多く、桧家住宅の「Z空調」は有名ですよね。

冷暖房の方法は天井吹き出し型、床下冷暖房型、壁パネルふく射型、壁掛けエアコン型がありますが、ほとんどのハウスメーカーや工務店で天井吹き出し型が採用されており、全館空調のなかでも主流です。

全館空調のメリット

全館空調は家全体の空調を管理するため、快適さによるメリットがたくさんあります。

  • 一年を通して快適に暮らせる
  • 部屋ごとの寒暖差がない
  • ヒートショックを防げる
  • きれいな空気が循環する
  • 見た目がすっきりしている

家を丸ごと冷暖房する全館空調は、24時間365日つけたままにしておくのが基本。

そのため、夏は涼しく冬は暖かく、一年を通して快適に暮らせるのが最大のメリットです。

特に冬場は廊下、トイレ、脱衣室などの寒さに悩む人も多いはず。

高齢ならヒートショックが心配ですし、小さいお子さんのいる家庭では、お風呂上りに子どもの体を拭いているうちに湯冷めしてしまう・・・なんて心配も、全館空調なら問題なし。

さらに、全館空調は換気システムも兼ねているため、きれいな空気が循環するのもメリットのひとつです。

全館空調のデメリット

全館空調は「後悔している」なんて口コミもよく見かけますが、メリットだけでなくデメリットももちろんあります。

  • 初期費用が高額
  • 空気が乾燥する
  • 部屋ごとに設定温度を変えられない
  • 電気代がかかる
  • 定期的なメンテナンスが必要
  • 故障すると家中の冷暖房が止まってしまう

全館空調を検討するうえで、最もネックになるのが高額な初期費用です。

また、24時間エアコンを付けっぱなしにしているようなものなので、空気が乾燥して気になるという声も多数。

エアコンや床暖房と比較しても電気代は高くなりがちで、そこに冬は加湿器も付けるとなると、高額になる可能性も。

さらに、フィルター交換などの定期的なメンテナンスも必要で、ランニングコストもそれなりにかかります。

全館空調の初期費用

全館空調の初期費用は、建築会社によって採用している全館空調システムが違うため費用も様々ですが、だいたい150万~300万ほど。

後から簡単に追加できる金額ではないので、はじめの資金計画の段階で予算取りしておく必要があります。

エアコンや床暖房に比べると高めで、家の広さや部屋の数によっても変わります。

全館空調が住宅で採用されるようになったのはここ数年で、標準仕様としている建築会社はまだまだ少ないのが現状。

モデルハウスなどでは採用している例も多いので、実際に体感してみるといいですよ。

全館空調のランニングコスト

全館空調は、定期的なメンテナンスが必要で、さらに電気代も高くなりがちなため、ランニングコストも高いと言えます。

メンテナンスの頻度はメーカーによって異なりますが、月一回のフィルターの掃除と、2~3年に一度のフィルター交換が必要な場合が多いです。

また、耐用年数は10年~15年ほどと言われており、故障の際には数十万円の費用がかかることも。

電気代は間取りの工夫で抑えることもできるので、不安な場合はプロに相談しましょう。

床暖房と全館空調の比較

床暖房と全館空調は、注文住宅で採用するならどちらがおすすめなのでしょうか。

結論から言うと、どちらがいいのかは人それぞれ。

採用実績で比較すると、初期費用やランニングコストを抑えられる床暖房の方が多く選ばれています。

全館空調は予算に余裕があったり、在宅時間が長い、ペットがいるなどのライフスタイルによって選ぶ人が多いです。

それぞれの特徴と、費用を比較して見てみましょう。

床暖房全館空調
メリット・冷えがちな足元が暖かい
・空気が乾燥しない
・ゴミや埃が舞う心配がない
・掃除の手間がない
・子どもにも安心・安全
・一年を通して快適に暮らせる
・部屋ごとの寒暖差がない
・ヒートショックを防げる
・きれいな空気が循環する
・見た目がすっきりしている
デメリット・初期費用がかかる
・メンテナンスが必要(温水式)
・別で冷房器具が必要
・電気代がかかる
・初期費用が高額
・空気が乾燥する
・部屋ごとに設定温度を変えられない
・電気代がかかる
・定期的なメンテナンスが必要
・故障すると家中の冷暖房が止まってしまう
初期費用5万~10万/帖
60万~140万ほど(広さによる)
150万~300万
メンテナンス費不凍液の交換…1万ほど(温水式のみ)フィルター清掃
本体フィルター交換…5,000円ほど
換気フィルター交換…5,000円ほど
電気代エアコンよりも高め床暖房よりもさらに高め
(間取り・吹き出し口の数により高額な場合も)

全館空調による快適な暮らしを叶えるためには、高額な初期費用とランニングコストがかかります。

家の広さや間取りによっては、電気代がかなり高額になってしまうこともあるので、注意が必要。

家族構成や勤務形態によって、どちらが合っているかは人それぞれなので、予算とも相談しながら決めるといいでしょう。

効率よく暖房するためには?

床暖房にしろ、全館空調にしろ、効率よく暖房するには工夫も必要です。

暖房の効率が上がれば電気代を抑えられるだけでなく、家族みんなが快適に暮らせるように。

暖房設備ばかりに頼るではなく、間取りやデザインの工夫も同時に考えましょう。

点けたり消したりを繰り返さない

電気代を節約するため、こまめに点けたり消したりするのは、実は逆効果。

エアコンと同じく、床暖房や全館空調も立ち上がりに最も電力を消費するため、”部屋が暖まったから消す”というのは間違いです。

一度点けたら、出掛けたり就寝のとき以外は点けっぱなしにするのが正解。

全館空調は基本的には24時間稼働させますが、エアコンのいらない季節には切っているという人も。

朝晩は冷えるから稼働させて、昼間は切るといった使い方は、無駄に電力を消費するためおすすめしません。

気密性・断熱性を高める

快適な暮らしを叶えるためには、高気密・高断熱の家づくりが欠かせません。

せっかく床暖房や全館空調を採用しても、家自体の気密性・断熱性が悪ければ暖まるまで時間がかかりますし、寒さも感じやすくなります。

逆に高気密・高断熱の家であれば、冬でも昼間なら暖房なし、という過ごし方が可能に。

全館空調なら、室温が保てていれば余分な電力を消費せずに済みます。

断熱材の施工方法や種類サッシの種類などにもこだわって、高気密・高断熱の家づくりを目指しましょう。

間取りを工夫する

暖房効率をあげるには、間取りの工夫も重要です。

最近流行りのホテルライクな家づくりでは、広いLDK・大開口のサッシ・吹抜などが人気。

しかし暖房効率という点からすると、どれもマイナス効果です。

もちろん快適さばかりを求めて、希望の間取りやデザインを諦めるのはよくないので、プロと相談しながらベストな間取りを決めていきましょう。

素材を工夫する

間取りだけでなく、素材によっても部屋の暖まり方は変わります。

例えば床材なら、モルタルやタイルは夏はひんやりと涼しくていいですが、冬は底冷えする原因に。

フローリングの方が暖かみを感じやすく、無垢ならより一層過ごしやすくなります。

素材によって熱の伝わり方は違いますし、素材そのものの温度感も違います。

床暖房は床材によって使用できないものもあるので、要注意。

最近ではデザイン性にこだわった家づくりが人気ですが、素材の特性も考慮しながら決めていくといいですよ。

ライフスタイルに合った暖房システムを選ぼう

床暖房と全館空調は、どちらも家づくりの要望として人気の設備です。

それぞれにメリット・デメリットがあり、ライフスタイルや予算によってどちらが合っているのは異なります。

初期費用ばかりでなく、熱の伝わり方・ランニングコスト・メンテナンスなど様々な点を比較して検討することが大切です。

予算や間取りが心配という場合には、床暖房や全館空調を標準仕様としている建築会社を選ぶのも手段のひとつ。

また、気になる電気代や過ごしやすさは、家の間取りやデザインを工夫することで解決しましょう。

金額だけでなく「どんな家に住んでいて、どんな生活をしていて、どれくらい電気代がかかるのか」も参考にしてくださいね。

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